CYAN MUSEUM

表現者と鑑賞者


お詫びと訂正

2025年4月10日発売 CYAN ISSUE 42内『CYAN MUSEUM』につきまして、本文中に誤りがありましたので、下記の通り訂正いたします。読者の皆様ならびに、関係者の皆さまにご迷惑をお掛けしましたことをお詫び申し上げます。


《Frosted Window#95》2024 年 1,620 × 1,620(mm) キャンバス / アクリル絵具

綿キャンバスにアクリル絵具を用いて描かれる景色は、ぼやけた表情を纏い、曖昧な輪郭のまま鑑賞者の前に現れる。作品のモチーフは、自身がスマートフォンで習慣的に撮影するスナップ写真から選んだもの。写真の多くは日常の記録であり、ただ自身の存在を証明しているものだと言う。それをキャンバスに絵具を滲ませながら描くことで、不明瞭な部分は見る者の記憶や経験と結びつき見えない部分への想像を促す。「Frosted Window#95」や「Curtain#43」シリーズでは、作品に特定の物語を持たせるのではなく、鑑賞者ごとの解釈を尊重するため、海や木、山などの普遍的なモチーフを用いることが多い。日常の風景を題材にしながらも、曖昧な輪郭を通じて、見る人の経験や感覚に委ねることで、新たな意味を生み出していく作品になっている。角谷 紀章は、時代や国が異なっても、それぞれが見てきたものによって視点や記憶を反映しながら、自由に解釈できる作品でありたいと考えている。角谷の作品は、何かを明確に伝えるものではなく、鑑賞者が自身の内面へと没入するための装置になり得るだろう。見えづらいものの中に、私たちは何を見出すのか。作品は、その問いを静かに投げかける。

《Curtain#43》2024 年 1,167 × 910(mm) キャンバス / アクリル絵具

角谷紀章 / KISHO KAKUTANI

兵庫県生まれ。2022年に東京藝術大学大学院 美術研究科 博士後期課程 美術専攻日本画 研究領域を修了し、博士号 (美術 )を取得。すりガラス越しのようなぼやけた表現を用い、鑑賞者が自身の 経験や観念によって補完し、想像を広げる作品を制作する。主な個展は2023年の「媒介であり防護壁」(銀 座蔦屋書店・四季彩舎)、「白い夜」(コートヤードHIROO)。2025年の「FOG」(MU GALLERY)。